CASE ご相談事例

Yさん (男性・20代前半・関東在住・会社員)

ご相談に至った経緯

競馬観戦を趣味としていた相談者は、毎週日曜日は現地観戦へ、その他の日は競馬の動画を見るのが日課となっていました。

ある日、いつもと同じように「あなたへのおすすめ」欄に出てくるショート動画を見ながら食事をとっていると、たまたま相談者が観戦に行った競馬場の様子を撮影したショート動画が流れてきたそうです。何の気なしにその動画を見ていると、「眩しすぎてレースが見えないw」「金かけるところ間違ってるw」といった文字とともに相談者の姿が……。頭・顔・体がはっきりと映し出されており、そのコメント欄には「ハゲの賭けw」「頭スカスカ財布もスカスカw」など、300を超える勢いで相談者の尊厳を深く傷つけるようなコメントが寄せられていました。

年齢の割に頭髪が薄いことを気にしていた相談者は酷く傷つき、動画の削除を求めて当事務所に法律相談の電話をくださいました。

解決までの流れ

相談者は当事務所に依頼する前に自身でもYouTubeに対して当該アカウントの削除を要求していましたが、なかなか削除や凍結等には応じてもらえなかったそうです。

この事実を受け、当事務所の弁護士はその肩書とともに実名で任意での削除要求を試みましたが、それでも当該動画は削除されず、問題の投稿を行ったアカウントは、その後も本事案と同じように競馬場の来場客を侮辱するような投稿を続けていました。

そこで、我々は相談者の要望に応えるべく、Youtubeの運営会社である「Google,LLC」を相手方として、相談者の居住地を管轄とする地方裁判所に対し、投稿削除の仮処分を申し立てました。

本事案のような裁判手続きでは、動画の内容だけでなく、その動画に寄せられたコメントも判決の重要な要素となります。今回は、300を超えるコメントのほとんどが相談者の容貌を侮辱するような内容であり、動画の内容自体もそれを狙ったかのような構成になっていたため、動画全体が相談者を侮辱することを目的とした悪質なコンテンツとして認定されました。結果的に、権侵および名誉感情侵害(侮辱)が認められ、相手方の「Google,LLC」に対して、当該動画を削除する決定が下されました。

結果・解決ポイント

写真や動画に偶然人が写り込んでしまう、いわゆる「映り込み」をはじめ、近年では、Youtuberやインスタグラマー等の活躍により、肖像権侵害ではないかという相談、質問が非常に多く寄せられます。その多くは、肖像権侵害には該当しないような悪質性の低いものですが、中には他人の容姿や外見をネタにしたようなものもあり、こうした悪意のあるコンテンツは対象人物の尊厳を深く傷つけるものとして、肖像権侵害や名誉感情侵害(侮辱)が認められるケースが多いです。

今回の事案も投稿された動画自体に「ハゲ」や「頭髪が薄い」といった直接的な表現は記載されていませんでした。しかし、動画の構成や「眩しい」といった身体的特徴を揶揄するような表現、そして大量に寄せられたコメント、そのすべてが相談者の頭部を侮辱するような内容であったことから、相談者に対して耐え難い精神的苦痛を与えるものだと認定されています。

YouTubeをはじめとしたソーシャルメディアには、コメント機能やシェア機能等が搭載されており、元の投稿と紐づけて第三者が意見を述べられるようになっています。こうした機能は手軽に情報を発信できるという魅力がある一方で、知らぬ間に誰かの法律上の権利を侵害してしまうという危険性もあるため、利用する際は法律違反を起こさぬよう細心の注意が必要です。

また、本事案のようにコメントの内容が判決にかかわってくる場合、投稿者に「単に日光が眩しかっただけだ」等の言い訳をされるケースがあります。あらかじめ反論を用意しておかないと正当な判決を得られない可能性があるため、被害者側も投稿されたコンテンツを多面的に観察し、対応策をしっかりと準備してから裁判に臨むことが重要です。

担当弁護士

弁護士 藤本 大和

SNS上のインフルエンサー、イラストレーター、YouTuberに対する誹謗中傷を中心として、特に発信者情報開示請求に注力している。
インフルエンサーや芸能の法的問題に対する様々な知見を有することから、特にSNS上で一定の知名度を得ているクライアントに対して、手広く法的サポートを提供している。

ネット上のトラブルで
お困りの方は
お気軽に
お問い合わせください

※お問い合わせ方法がご不明な方は
03-5577-4834」までご連絡ください。